更新日:2018年05月18日
花村先生は、昭和23年、福岡の炭鉱の酒蔵に生まれ、名家の坊ちゃんとして育てられた。しかし、父親が散財し、やがて家族は名古屋へと移り住んだ。
中学で母親を亡くし、高校で父親を亡くした。父親の相続放棄をし、妹を育てるため大学進学を諦めた。孤独な日々、仕事を転々とし、いつしかホームレスの真似事をするなかで、財産を持たない野垂れ死にの顔がなんとも安らかなのを知ったという。
上役に管理されるのが嫌で、独立できるならなんでもいいという理由から税理士となった。
親戚の面倒でやむをえず見合いもした。顔も思い出せなかった奥さんから手紙をもらい、結婚して子供を二人もうけた。家に帰ると子供が抱きついてくるのがたまらなく嬉しかったという。幼い子供に相続放棄を言い含め、「群れるな。はぐれろ。はぐれ鳥になれ。」と教えて育てた結果、二人とも立派にはぐれた社会人となった。
職場で「荘子」を読む先生の後姿、かつて読んだ「清貧の思想」の一節のように思われた。