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豊川市の図書館に広告を出しました

更新日:2018年11月01日

豊川市の図書館に広告を出しました 

  豊川市で相続専門の事務所を構えてから1年半が経過しました。豊川市の皆様に当事務所をいっそう認知していただけるよう、平成30年11月1日より1年間、豊川市の図書館の検索票・貸出票に広告を出します。

  私は、若いとき、豊川市の図書館をよく利用しました。いまでも、中央図書館で借りた多くの作品のことを思いだします。

  井上靖の清冽、小林秀雄の明察、中島敦の達観、司馬遼太郎の雄渾。ショーペンハウエルの諦念、キルケゴールの懊悩、ニーチェの熱情、ウィットゲンシュタインの沈思。シュトルムの悲恋、モリエールの嘲笑。詩経の韻律、唯識の哲理、古事記の神さび。

  「詩人になるか、さもなくば、なんにもなりたくない」(ヘッセ)。文弱を魅了した最も純潔な言葉。愚劣を使嗾するなんと崇高な言葉だったことか。あるいは、崇高を使嗾するなんと愚劣な言葉だったことか。

  何枚も握りしめた検索票、書架を見上げては襲われる眩暈、現実を忘れ教養に遊ぶ超俗の驕り、まどろみのとき栞(しおり)に使った貸出票。将来の生業のことなど考えたことはなかった。長じて、実学を修めるため、詩文の庵に立ち寄ることはなくなった。部屋の隅に日焼けした貸出票だけが転がった。

 あれから、短くはない時が過ぎた。豊川の詩文を愛する人々がまどろむとき、かつての私と等しく、栞に使うであろう貸出票。今、そこに私の名前が載る。詩文とは無縁な肩書をつけて。

 郷愁とはこういう感情をいうのだろう。戻るとも戻れない。けれど、後悔はない。そのときそのときの純潔を貫いた回り道の行末だから。

  小さな広告ですが、私にとって、感慨深い広告です。かつてそこで詩文を愛した私が、いまそこで詩文を愛する人々の世俗の幸せに、貢献できるきっかけになってほしいものです。

 

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