更新日:2018年05月19日
節税が動機となって私法行為の契約類型が選ばれることがあります。出資契約ではなく組合契約を締結することで事業経費を生じさせ、他の所得との損益通算によって所得税を節税するという手法もその一つです。動機が節税だからといって契約は原則無効にはなりません。小賢しくはあっても著しく不当とまではいえないからです。
では、相続税の節税を動機とする養子縁組は無効でしょうか。この点が争われた事例で、最高裁は、民法上の縁組意思と節税の動機は併存しうる、専ら節税のための養子縁組でも直ちに「縁組をする意思がないとき」(民法802条)には当たらず無効とはいえないと述べました(平成29年1月31日)。「縁組をする意思がない」という要件事実の証明責任は無効を主張する相続人にあります。判例を意訳すれば、動機が専ら節税にあれば民法上親子関係を形成する意思がなかったと相当程度は推認できるが、それだけで高度の蓋然性の程度にまで推認できるわけではないということです。