更新日:2019年02月03日
平成30年12月21日に、「平成31年度税制改正の大綱」が閣議決定され、相続法改正に伴う税制改正の方針が明らかになりました。
配偶者居住権の評価方法は、法制審議会が提案した遺産分割協議における評価方法と同じです。表現がちがうだけです。
敷地については、相続税法上も減額要因になりますが、貸家建付地とは異なった精密計算です。
複利現価率(ライプニッツ係数)だけでもやっかいですが、今後は、債権法改正で民法の法定利率が市中金利に応じて変動するため、ますます相続人が自分で計算することは不可能になります。
言ってもしょうがないのですが、知性の使い方がちがうんじゃないかと思います。
① 配偶者居住権の評価
建物の時価ー建物の時価×(残存耐用年数ー存続年数)/残存耐用年数×存続期間に応じた民法の法定利率による複利現価率
② 配偶者居住権が設定された建物の所有権
建物の時価ー配偶者居住権の価額
③ 敷地の利用権評価
土地の時価ー土地の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
④ 敷地の評価
土地の時価ー敷地利用権の価額
特別寄与者は、遺贈により財産を取得したものとみなし、貰いに応じて相続税を納めることになります。
全体の財産が基礎控除額を超えなければ相続税はかかりませんが、全体の財産が基礎控除額を超えればわずかな金額でも課税です。
そうなると、特別寄与者に申告業務の煩が生じますので、申告実務では工夫がでてくるでしょう。
たとえば、実際には特別寄与料を払うのだが、相当分をつれあいの相続人の取り分として増やしてあとはうちうちで渡すなど、税務申告の面倒を省く形で申告されることでしょう。
税務署も、僅少な金額では文句は言わないでしょうが、特別寄与料がまとまった金額なら2割加算の増税分を見逃さないでしょう。
遺留分制度の見直しに伴う税法上の取り扱いは、今後、検討するとのことです。
配偶者居住権の評価方法はちがった方向があってもよかったと思いますが、遺産分けにおける評価方法と整合性をとる必要性が強いことから、合理的な改正と言えば言えますので、新しい制度の合理的設計にかかわる関係者の努力には敬意を抱きます。