更新日:2018年05月20日
私は、比較的、遺言書の作成を勧めないほうですが、絶対にお勧めする事案があります。それは相続人がいない事案です。
かつて、1億円の財産を持つ女性が亡くなりました。夫に先立たれ、子もなく、親もなく、兄弟姉妹もなく、甥姪もいませんでした。この女性は病がちで、親等の近い親戚が、親身になって身の回りの世話や法事の主催を代行していました。女性の死後、相続財産は国に帰属しました。弁護士が相続財産管理人に選任され、形見分けもないまま家は取り壊されました。親戚の方は、女性の遺志を継いで、女性の弔いと先祖の永代供養に奔走しました。その後、特別縁故者の申立てをしましたが、裁判所からは200万円与えられただけでした。
特別縁故者としての貢献の内容・程度及び相続財産分与額も事案によって様々ですが、この事案のように、人情味が乏しく、余韻のない結末も多いのです。誠実な者ほど遺言の話は切り出せないものです。察して書いてやるのが逝く者の責任です。