更新日:2018年12月17日
(1)形成権から当然減額に変更
これまで、設備の故障による賃料減額の取り扱いは、借主が文句を言ったときにはじめて相当額が減額される取り扱いでした。
それが、今回の改正で、設備が故障した時点で、当然に賃料の相当額が減額される取り扱いに変わります。「家賃減らして。」と言わなくてもいいんです。
(2)「当然に減額」の意味
当然に減額というのは、自動的に契約内容が変わるという意味です。たとえば、借主が、設備の故障から3か月後に「実は、故障してました。」と言ったとしますね。その場合でも、黙っていた3か月分の家賃についても減額が認められるんです。
貸主は、故障を知らなかったとしても、契約は自動的に変わってますから、賃料全額は法律上受け取る原因がない。ということで、あとで、一部分は返さなければなりません(不当利得返還義務)。
(3)対応
ア 故障の内容と減額割合
故障の内容と減額割合は、改正後も、条文で決められていません。エアコンが壊れた場合、風呂が使えない場合など、故障の内容によって、いくらくらい減額をすればいいのか協議が必要になります。
添付資料2の新聞記事を見てください。そこに、賃料減額と免責日数の目安一覧表が載っています。
風呂がつかえない場合は10%の減額ですか、もっと減額してよという感じですね。免責日数は3日ですか、3日後に直せばおとがめなしか。感覚が古いですね。たぶん、銭湯が身近にあった時代の名残なんでしょうね。
エアコンの故障、月額5000円の減額ですか。免責日数は3日かよ。夏場は死んでしまいますね。免責日数は1日で、それ以降は月額2万円くらい減額してほしいですね。
電気が使えない場合、2日は免責ですか。自宅で仕事をしている人はどうするんですか。私なら、2日も待っていられませんよ。書類がプリントアウトできない。FAXできない。裁判所に叱られますよ。こんなんなら、急迫の事情があるとしてこっちで修繕を頼みますね。あ、そうすると、それはそれで貸主は修繕対応しなくていいからラッキーか。あとで請求書もらって金払うだけですもんね。やりましたね。皆さん、仕事減りますね(笑)。これからは、不動産経営、案外、簡単になるんじゃないですか。管理会社いらないんじゃないですか。(笑)まあ、参考になるようなならないような数字ですが、参考にしてください。
こういうことは、あらかじめ、契約で、定めておいた方がいいですね。たとえば、「故障を含む一部滅失等による賃料の減額割合及び免責日数については、別紙に定める一覧表(●作成)によるものとし、これに該当しない場合には協議する。」と書いておくのもいいと思います。
イ 証拠を提出してもらう場合がありうる
故障の時期について証拠がないとき、どうするか。通常、悪さをする借主はいませんが、なかには、故障の時点をさかのぼって報告するケースもありうるでしょうね。
わずかな金額なら払ってやればいいです。でも、多額に及ぶ場合には、きちんとした証拠を提出してもらう必要があります。今なら、携帯電話で動画が取れます。故障の状態を撮影してもらえば日付もつきます。賃貸契約書の仕組みとして、故障の時期について借主が証明することの確認条項と、証明ができない場合には文句を言ったときから減額するなどの特別の合意をすることも検討したほうがよさそうですね。