更新日:2018年05月20日
戦後、相続法は家督相続から均分相続に変更されました。当初、純粋な均分相続でしたが、その後、日本の家族規範の実態にあわせて、遺産分割にあたって遺族の貢献が考慮できるようになりました。これが寄与分の制度です。
労務提供や財産給付、療養看護などの方法で故人の財産の維持・増加に特別の寄与があれば、その評価額を優先的に貢献相続人に配分し、その残額を基準に法定相続分を算出する仕組みです。
もっとも、寄与分は、一般の方が期待するほどの評価にはなりません。遺産分割審判になれば、寄与分は認められてもせいぜい相続財産の15%程度と考えておいた方が無難でしょう。もし、この割合が不満であれば、遺言書、死亡保険金、生前贈与を検討するべきです。
あるとき、祖母の妹にあたる方に、後継ぎの貢献が期待ほど考慮されない仕組みをお話したところ、「(家督相続を)一体誰が変えただ!」と言われたことがあります。戦後の相続法は部分的に歪みを内蔵しているのも事実です。
遺産分割協議との関係で、特別受益者は、修正を加えた法定相続分から特別受益額を控除した残額分しか相続できないものでした。
特別受益の範囲については、条文上は、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として(の)贈与」としか規定がありませんが、制度趣旨は相続における衡平ですから、相続分の前渡しと評価できるような特別の贈与しか対象になりません。結婚式の費用などは特別受益にはならないでしょう。
一番問題になるのは、大学の学費です。かつて学士様はわずかでしたから、大学の学費は、「生計の資本としての贈与」と評価される傾向にありましたが、大学の進学率が著増した今日では、かつてほど特別の資金援助という評価はできなくなっています。家庭によっては扶養義務の履行または通常の贈与といえるような時代で、親も遺産分けで考慮することまで予定していないはずです。ただ、私立医学部の学費は高額ですから特別受益と評価されやすいといえます。