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農家の遺産分けで考慮すべき事情

更新日:2019年03月21日

農家の遺産分けで考慮すべき事情

 今日、調整区域の家、敷地、田畑山林は負債です。500万円前後の解体費用がかかる古い母屋・朽ちた納屋、無駄に広い売れない敷地2000万円、相続税評価額1反200万円の10分の1でも売れない管理に手間金のかかる田畑山林。それでも、誰かが背負うしかないのです。

 かつて弁護士だけであったとき、私には不思議だった。遺産分けで、新家に出た二男、嫁に出た娘のもらいが少ないことが。なぜ権利を主張しないのか。やがて税理士業務で農家の実情を知るにつれ、私は自らの浅慮を恥じた。農家の後継ぎは決して恵まれているわけではない。責任感から負債を背負っているにすぎないのだ。それをほかの兄弟姉妹は知っているから権利など主張しないのだ。農家が未開なのではない、考慮すべき事情に思い至らない弁護士の脳髄が未開なのだと。

 農家の遺産分けは、相続税評価額を基準に代償金を決めるべきではない。私は、口を出しませんが、農家を継がない相続人の皆様が、考慮すべき事情を考慮し尽くしてくださることをいつも願っています。

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