更新日:2018年05月19日
相続税の税率は、以下のように、累進税率です。
各人の法定相続分に応じた課税金額 |
税率 |
控除額 |
1000万円以下 | 10% | 0 |
3000万円以下 | 15% | 500,000 |
5000万円以下 | 20% | 2,000,000 |
1億円以下 | 30% | 7,000,000 |
2億円以下 | 40% | 17,000,000 |
3億円以下 | 45% | 27,000,000 |
6億円以下 | 50% | 42,000,000 |
6億円超 | 55% | 72,000,000 |
養子縁組の節税効果の肝は、基礎控除額を600万円分増やす点ではなく、法定相続分に応じた課税金額を多数人でならし、累進による高税率がかかる財産部分を減らす点にあります(※累進税率は10~55%)。相続財産3億7800万円、相続人子供3人の事例で、具体的に説明します。まずは、養子縁組をしない場合です。
① 課税遺産総額
3億7800万円-基礎控除額4800万円(3000万円+600万円×3人)
=3億3000万円
② 各人の法定相続分に応じた課税金額
3億3000万円÷3人=1億1000万円
③ 各人の法定相続分に応じた相続税額
1億1000万円×40%-1700万円(累進税率調整控除額)=2700万円
④ 相続税の総額
2700万円+2700万円+2700万円=8100万円
前回見たように、相続財産3億7800万円、相続人子供3人の事例では、課税遺産総額は3億3000万円、1人あたりの税額は2700万円、相続税の総額は8100万円でした。養子縁組をすると次のようになります。
① 課税遺産総額
3億7800万円-基礎控除額5400万円(3000万円+600万円×4人)
=3億2400万円
② 各人の法定相続分に応じた課税金額
3億2400万円÷4人=8100万円
③ 各人の法定相続分に応じた相続税額
8100万円×30%-700万円(累進税率調整控除額)=1730万円
④ 相続税の総額
1730万円+1730万円+1730万円+1730万円=6920万円
(1180万円の節税)
このように、1180万円の節税ができます。
以上、「養子縁組の効果は600万円の基礎控除額の増加だけ」との誤解を解くために、養子縁組の効果を実例を挙げて説明しました。
しかし、私は、節税を目的とする養子縁組を積極的には推奨しません。家族の自然な人間関係が失われる原因になりがちだからです。税率が高くないときは節税目的の養子縁組をすべきではないと思います。相続では節税がすべてではありませんからご留意ください。
古くから、わが国では相続税対策の養子縁組が濫用されてきました。現在では、相続税の計算過程に限っては養子の数を制限(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで)するようになりましたが、平成27年以降の相続税の増税により再び脚光を浴びるようになりました。
つくづく、相続税とは、人間関係を人工的に創り上げる行為を助長してきた罪つくりな税金だと思います。家族の自然な人間関係を維持し国民の幸福を最大化するために、基礎控除額をあげるか、累進税率を緩和するか、法規制を緩めるべきだと考えます。